カレーですよ4745(千葉いすみ市長者町 南印度料理 巡るインド)辿り着いた楽園。

ちょっと遠くにあって、わりと周りにはなにもない場所にあって。しかし、遠くにあってなにもなくて、そういう場所にあるのが価値となっていて、そこへまた行きたくなるというレストランを見つけました。

いや、すごかった。

 

 

カレーですよ。

 

 

常日頃から言っている言葉があるのですが、「味3割」。そんな言葉をうそぶくわたしです。誤解恐れずに言い続けています。どういうことか、つまりレストランは体験が大切であって味が占める割合と言うのはレストランに行って食事をする中の3割くらいではないか、そういうことを言っています。聞けばお分かりのように多少誇張しているのは事実だけどね。3割、ではその努力に対する物言いとして失礼かもしれません。でもさ。

味は当然ながらとても大切なものですが、とはいえそれ以上に大切なのはそのレストランでの体験だと考えています。体験の中の要素のひとつとしての味なんじゃないかなと思っています。体験を加速するための素晴らしい味であり、味の凄さを加速させる店内体験でもある。お互いが補完し合うものなんじゃないかしら。

立地も店構えもそうだし内外装や、その店の在り方、らしさ、何よりもそのお店を生き物として生かしている従業員、ひとの雰囲気というのが大事なのではないかと考えていすのです。それをいいたいがために、いつでも少しイロをつけてものを言っちゃう。

店の空気と言うのは、店主とお客が二人三脚で作っていくものだと感じています。実はこのお店、まだできたばかり。なのでお客さんが一緒に作り上げると言う空気はまだ希薄かもしれない。だったらどこを見るか、やはりひと、店主を見るわけです。気遣いのある店主は長身のイケメンでにこやか、丁寧。わたしのようなおじさんにも優しくしてくれてなんだか感激するわけですよ。おじさんが優しくされないこの世界においてここはこの世ならざる大事な場所なのでは、など思うわけです。

馬鹿話しはさておき。

 

「巡るインド」

 

というこのお店。

 

まずロケーションがすごいんです。お店には裏手にテラスがあるのですが、そのテラスからの眺め、地平線とまではいわないけれど、田畑が広がりその中をお店の脇から続く未舗装の一本道が遠くに見える里山まで続く眺めで、ちょっと圧倒されます。

たしかに色々見てみると、JR外房線の長者町駅から10分で歩けるのですが、その距離感が狂う感じの広さがあったんです。

周りは畑が多いみたいで、とにかく近くに家が少ない。素晴らしい。抜けがいい風景が遠くまで続きます。

そしてお店自体が洒落ています。シンプルで心地がいい店内。白い壁とところどころに配された木の梁。アイアンフレームの椅子とテーブル。隅に備わる薪ストーブ。そして大きな窓から見えるテラスとその向こうに広がる田園風景。心の肩こりがほぐれていくような気分になりますよ。

リラックスというものがあると感じます。

さて、注文。

 

基本がベジミールス1種となっていて、そこにその日のノンベジ追加ができるというスタイル。キッズメニューもあるのが心優しくも地域性をきちんと見ていると感じました。ベジミールスに本日のノンベジを追加することに決めます。チャーエーももらいましょう。

ノンベジ、素晴らしかったなあ。まずエビがきちんと旨いんですよ。柔らかで甘旨いたまらないやつ。優しくとげとげしないトマトベースの素晴らしいグレイヴィで、そこに魚介の出汁強く美味しくというクラクラする仕上がりです。これはまいったなあ。すごく旨いなあ。鍋まるごと食べたいくらいです。

クートゥは穏やかで酸味とがらせず。ほかの料理と合わせた時に懐の広さが見えるというタイプのもの。サンバルは豆が強く溶けて粘度高く、好み。こう言う感じのサンバルをごはんなし、パンなしで腹一杯食べたくなることがあるんだよねえ。自分で作らないのでなかなか叶えられないでいます。

ラッサムも、好み。酸味にトゲトゲしたところがなくて、しかしちゃんと酸っぱくて滋味も感じられるいいものです。とてもいいぞ。添えられたダヒとともにごはんにかけて〆のカードライスとしました。食後、口中がすっきりと仕上がってとてもよかったよ。ああ、楽しい食事。

 

ポリヤル2種はカボチャのものとブロッコリだったかな。どちらも当たりのやわらかい味付け調理でほっとします。

カボチャのポリヤルがココナッツ風味でほくほくで、他の汁類と相性もいいね。

レモンのピックルがすごくよかったんです。ともすればマスタードオイルの匂いがキツすぎて感覚に合わないな、というものが多い中、ナチュラルな感じがあって果実の新鮮さも感じ取れました。これ、いいな。ご自分で漬けたのですか?と聞くと違うとおっしゃる。なるほど、チョイスの勝利なんだね。きちんと自分のお店の料理に見合うものを正確に選んだということだ。納得がいくなあ。

そうそう、ラッシーをご馳走していただいたのですが、このセンの味は今までなかったなという軽やかさと手応え、両方があるものでした。頭を捻りつつ美味しくてすぐに飲み干してしまったよ。

食べながら、久しぶりにインド料理の、ミールスのいろいろな味といいところを思い出したりしました。

当たり前のことだしジャンルとわずであるのですが、ミールス、ミールスと何気なく呼んでいるあれは、コックさんのクセや舌の感覚で本当に幅が広い味で出てくるもので、それが面白いんです。特に感じるのはやはりサンバルとラッサムが個性が出やすいなというところ。このお店のそれらはチューニングの繊細さや素材を生かそうとする真面目さが伝わってくる、そう感じます。

ご店主はその味そのままといった雰囲気で、真面目で繊細な感じを受けるかたでした。少しおしゃべりをさせてもらったら強くインドという国に興味を持っていらっしゃる様子で、わたしが少し生意気な意見を述べたのがあとになって恥ずかしかった。純粋なものを感じさせてくれるインド好きのご店主で、またお会いしたくなります。

思ったのは、すこしフィルターがかかってしまう言い方なんですけど、どこのコミュニティにも属さず、自然発生的にこういう店主とお店が、この厳しくも素敵な立地でインドレストランをスタートさせる。そういう時代になったのだと感慨深いです。何をやってもいいし、自由なんだと気付かせてくれます。

人の目を気にしたり付和雷同なんてのはナンセンス。我が道をゆき、その道で出会った人たちとの縁を大事にする。それだけでいいと思っています。

行ってよかった。