カレーですよ5783(千葉勝田台 葉菜)野菜の魔法。

実家から15〜30分のあいだに名店が3つほどあるのです。検見川「シタール」、稲毛「シバ」、勝田台「葉菜」。

 

 

カレーですよ。

 

 

どこも甲乙付け難い名店。そうなると実家の帰りに何か美味いものを、など思った時の悩みも尽きないわけです。どうしようかなあ、今夜は。

 

この夜は帰り道と反対にある勝田台駅そばの

 

「南インド料理 葉菜 / hana」

 

に向かうことにしました。吉田シェフにお会いしたかったんです。扉を開けるとすぐに奥様が気がついてくださいました。うれしい。仄暗い照明と木を多用したインテリアは腰が落ち着き、いつ来ても快適です。

この日の料理の説明をもらって、ベジかノンベジを決めます。ノンベジのターリ、、じゃないや。ミールスを選びます。カレーは当日の選択肢からエッグマサラにします。とにかくゆで卵カレーが日本、インド関係なく好きなんであるよ。うっかりアンディシェフのミールスを逃しちゃった。次回、これで行こう。

吉田シェフは野菜の魔法使いだと思ってます。いや、ちょっと違うかな。料理もする農家さんかもしれない。違うな、シェフの渾身(畑作)含む、かもしれない。野菜を知る男、野菜に近い男というのが一番ピッタリと来る気がしています。ご自分で畑を開き、野菜を育て、考える。だから野菜がいまどんな状態で何を欲しており、結果収穫してきた野菜の素性を知った上でそれに呼応する最適な調理を施す。なかなか真似できるものではないでしょう。すごいんだよやっぱり。

吉田シェフの料理はスパイスと野菜のダンスのようなのです。インドの南の方の料理という手法や思考と自分で育てた野菜との行ったり来たり、せめぎ合い。それを楽しむんです。すごい体験だぞ。

エッグマサラ、これはもう、卒倒するくらい美味しい。夢に出そう。好みなんですよ、こういう味。タマネギねっちり甘く奥行き深く、フェンネルの香りが時より顔を出してそれが鮮烈な印象を作ります。旨味と香ばしさ、卵がねっちりする面白さ、これはすごいものだなあ。この料理を知ったエピソードなども聞かせてくださって、至福極まります。フレンチのメゾンでの体験に匹敵する楽しさ、尊さがそこにありました。

ダールがとても楽しい。その味は、軸足を甘さから塩味に移した、まるでしょっばいおしるこのよう。豆の風味が穏やかに浮き上がり、自然なものを食べているなあ、という感慨が湧き上がります。

ケーララの白いスチューもご馳走になってしまったよ。スチュー、ステューはシチューのこと。前も思ったんですが、ホワイトシチューをタミル語で翻訳(料理)するとこれになるんだなあ、きっと、という感覚があってすごく面白いのです。これも料理としての個性に野菜の個性が綺麗に重なって下支え、素晴らしいもの。いや、下支えよりももう少し野菜が前に出る、かな。これこそ吉田シェフの料理だなあ。

ラッサムも素晴らしい仕上がりです。酸味を強調せずに苦味が前に出て切れ味よく爽やかな印象。苦味はそのものが入るのではなく、ニュアンスとして柑橘の皮のような苦味。だから嫌味になっていないんだね。食べていてそういう気づきをくれるのがとても楽しいんです。

 

サンバルにはドラムスティックの太いやつが入っていました。これがすごくてね、繊維質を口の中で削いで食べるのは同じなんですが、その中に絹さやの実のような種が入っていてこれが青々しくて食感よく大変においしかったんです。この感じは初めてでびっくりしたよ。なるほど、本来はこれなんだな、きっと。

チャトニ、どれも唸らされます。ココナッツチャトニはあまじょっぱいお菓子のよう。ずっと吸ってたい。トマトチャトニの旨みときたらもうね、たまらないものがあるんだよ。生姜のチャトニが一番好みだったなあ。これはもう瓶詰めにして持ち帰りたい。ブンセンとか桃屋に商品化してもらいたい。刺激強いのにおかしな違和感を感じない、ちゃんと自然なものからできているのがよくわかる良い薬味です。酷暑の夏はこれとごはんとダヒで生きていける気がするよ。

既視感がやってきます。そうだった、吉田シェフの料理ってすんごい美味しいんだった。でもいい意味で忘れてまた店に来て、いつものようにまたゼロから驚かされるんですよ。なぜか毎回そうなのです。

それは思うに、それだけ自然なもので、吉田シェフの作ってくれるあの皿の上の料理たちはある意味特別ではなく、日常の延長の中にある料理だからではないかと想像しています。バランスを崩したり個性を与えるために偏りを作ったり。そういう料理も脳みそを突かれる感があってとても好きなんですが、吉田シェフはそれよりもずっと当たり前で自然な食事を作ってくれていると感じています。

南インドの料理というのはなんとなくなんですが、レストランでも家庭料理からやってきたイメージで、逆に北は宮廷料理からレストランに降りてきた料理(家庭料理はまた別の話)という印象があるんです。吉田シェフの料理はそういうのとリンクしている感があります。それなのに、とびきりなんだよ。なんだこの魔法みたいなのは。

もしかすると南インドの食というのがそういうものなのかもしれないな。そこに吉田シェフの繊細さや野菜への愛情が重なります。特別なものになるのです。

ちょっと通うのを止められないな。