カレーなしよ(渋谷 ミヤシタパーク JB’s TOKYO ミヤシタパーク店)本日開店。

プレオープン。館内の関係者だけの日にお邪魔してしまったのですよ。

まさにお邪魔してしまったような状態、一般のお客さんはオミットでミヤシタパーク館内ショップのスタッフさんたちが集中して並ぶ光景。うーん、今日は遠慮しておこうか。そんなことを思いながらなんとなく列の後ろのほうでもじもじしていると稲妻の速さでスタッフさん(個性的でカッコかわいい美女)が飛んできました。「はぴいさんですよね?」ときたぞ。

 

 

カレーなしよ。

 

 

あ、こりゃ店主にすでに視認されていたということね。そんでは失礼して大人しく列の最後尾で待つこととしましょう。すぐにわたしの後ろに女性がひとり並んだんですが、なんとそこで打ち止め。うひゃ!!

たしか13時半くらい。どうやら食材が底をついたらしいです。ありゃりゃ、なんというタイミングにお邪魔してしまったんだろう。

キッチンを覗くと店主が冷蔵庫からミンチを出して必死の形相でこねています。あの柔和な顔の店主が鬼の形相。うむうむ、これはえらいことだ。大忙しだ。そして、ここ、

 

「JB’s TOKYO ミヤシタパーク店」

 

では当たり前なんですが、わかっているつもりだったんですが、その光景を見るにつけあらためて本気で100%の手作りなのだねえ、ということがひしひしと伝わってきます。

府中の店ができたあたりまでは「ケチャップはハインツに勝てなくて」と笑いながらお馴染みの白いラベルのボトルを使っていた佐藤店主。お見事!新しいチラシには「100%手作り」を掲げるようになってました。どうやらケチャップもやっつけたようす。すごいなあ、なんということだ。

ケチャップも、ドレッシングも、バンズもパティもマヨネーズもピクルスもこのお店そのもの、店内で全部作っているんです。クラフト、という言葉はこの店のためにあるようなもんだよ。ダテでクラフトを名乗る店は裸足で逃げ出す本物の強さ、強靭さがあります。だからほら、壁は茜星で埋め尽くされて、ディスプレイまでしてある。カッコいいねえ。

パンの型だってほら、この通り。この数だよ。この場所、店でこねて、焼いている証明です。どうなってんだいったい。

 

新製品の「クリスピー★チーズバーガー」は、これはテリヤキ味だね。テリヤキソースが自然で控えめな味つけになってて好ましいんです。

強すぎる化学調味料を使わないからこそこの味になるんだねえ。しみじみうまい。

ごくシンプルなテリヤキバーガーで、パティはいつもの自家製の四角い、いい感じのやつ。ちゃんと繋がってるのに挽肉としての主張が強く顔を出すパティもサイコーです。バンズはカリッカリで食感心地よい。チーズが伸びるギミックが楽しい、、らしいんですが、わたしのところに来たものはもう一つ伸びなかったよ(笑)佐藤さんにそれを告げるとあからさまに残念そうな顔をします(笑)。それが面白いんです。(たぶん話し込んじゃってちっとも手をつけなかったあたしのせい)

それはつまり、楽しませようとしてくれているということ。これはもうね、佐藤店主の姿勢。そういう姿勢なんだよ、むかしっから。お客さんも一緒に楽しもうよ、というサジェストがそこにあると思うのです。

 

もう一つの「チーズバーガー」もシンプルでスタンダードなチーズとパティの組み合わせ。ブラックペッパーがちらり、チーズがいい具合にとろりでいい感じなの。バンズに肉汁を吸わせてあってなんとも幸せな気持ちにさせてくれます。おかしな高級方面に振らずに正しく、ファストフード。逸脱していません。しかし、なのに、しゃんとした食材を使って真面目に作ることで驚きのうまさ、輝きを得ているのです。これは本当は食べもの須くの根源なんだけど、こういう食べ物、少ないよねえ。

ひゃっぺんでもいう覚悟でいつも発言するんですが、外食店、サラダを蔑ろにしている店はメインディッシュ前に席を立っていいよ。そのサラダと同程度のメインディッシュしか出てこないからね。これは本当に、体験から。ここんちは野菜の扱いもきちんとしているからレタスはバリっという食感があります。そして店内で作っているドレッシングがちゃんと美味しい。いいねえ、いちいちちゃんとしてる。

「あとはチーズとレタスだけ!」(自家製にするなら、の意味)笑いながら佐藤さんがいいます。楽しすぎてゲラゲラ笑っちゃう。こんなハンバーガーショップ、世界中探しても、そうだなあ、、、アメリカの、発注を忘れたらハインツが来るまで1週間も待たされるようなローカルハンバーガーショップか、日本の代々木、府中、渋谷以外にないだろうね。いや間違いなく。

店作りも相変わらずの佐藤店主スタイルでディティールが楽しくて仕方ない。そして顔を合わせればいつも通り。外側からちょっと見えづらいキッチン裏の席におっさん二人が隠れて話し込みます。

 

「ミヤシタパーク、ちょっときれいすぎるよね?ダメだよねこれ」(わたし)

「だからさ、ちょっと店作りをラフにして」(佐藤店主)

「そうか、ストリート感!」(わたし)

「そうそう。それがなくなっちゃったら僕らの知ってる渋谷、僕らの知ってる宮下公園じゃないわけで」(佐藤店主)

「そうだよねえ、スケボーとグラフィティとヒップホップカルチャーと」(わたし)

「だからあのたくさんある張り紙もね、初めはお店のアルバイトの心で新規オープンなんだから!ってベタベタとたくさん貼るわけ、それで10分おいて清掃の人の気持ちになって「なんだこれは、こんなに貼り付けやがって」って言いながらわざとバリバリはがして(笑)」(佐藤店主)

「超おもしろい!(笑)」(わたし)、、、なんてね。

サイコーなわけですよ、何もかも。

 

本来この店はミヤシタパークの2階ではなく、宮下公園の横に掘っ立て小屋を建てて開店するべき店だったのではないか。そういう魂なのではないか。そう思うのです(妄想です)。

だからこの「JB’s TOKYO ミヤシタパーク店」はモダンで煌びやかなミヤシタパークの中にあって異質。そして異質であるが故、過去の宮下公園の時間とメビウスの輪的に繋がっているんです。ここは、あの頃への出入り口。アンダーグラウンドなストリートの魂と場所を同じくするものなのではないかしら。いささかセンチメンタルかもしれないですが、強くそう思うのです(妄想です)。

同じ明治通り沿いにそびえ立つ原宿の東急プラザ、あの中のスターバックスにも同じ魂が込められているのを知ってますか。無機質なビルの中にこれまた天下のチェーン、スターバックス。が、その壁には原宿のストリートの歴史が刻まれ、そのアイコン、高橋靖子さんがそこに魂を入れたんです。やっこさんにオープニングセレモニーに招待をいただいて、その瞬間を目の当たりにしましたから、間違いない。セントラルアパートの鎮魂碑でもあると考えています(妄想ではありません)。それでいいと思う。

渋谷から原宿のストリートカルチャーの歴史、その地層、堆積の上に今の真新しい建物が立っていることを忘れぬよう、いつでも気をつけているんです。ストリートカルチャーは若者文化とイコールというものではないのだよ。ワイルドな人たちだけのものでもない。その地を気に入ってそこに根を下ろし、地に足をつけて遊んで、暮らして、日々を営む。そういう人たち全員のものだと思っています(妄想では絶対ありません)。年齢世代の話じゃないんだよ。

楽しんでやってる人の話は楽しいよ。歯を食いしばっているところを見せないのではないんだよ。歯を食いしばっていることも楽しんでるの。そういう人が好きだ。

 

渋谷MIYASHITA PARK 2階に本日、8月17日グランドオープン。行って損無し。

 

 

【追記】

なんでこんなに暑苦しくだらだらと書いてるかって?そりゃあ当然、店主があの代々木「camp」を生み出し育てた佐藤卓さんだからに決まってるじゃん。