カレーですよ5701(神田神保町 ルシ)1周年とタミルニューイヤー。

SNSで山木さんが神保町のルシが1周年であることを書いていたのを見たんです。1周年記念、1日限りの記念ブッフェランチをやるらしい。うむっ!噂は聞けどちっとも行けないままになってたルシ。どうも山木さんがいる日とタイミングが合わなかったからなんですが、こりゃあ腰を上げるチャンスだぞ。

 

 

カレーですよ。

 

 

お店、すごくいい場所にあります。都営新宿線の神保町駅A5出入り口のすぐ脇。新しめのビルの地下にあります。

お店にたどり着くとまずおおっ!となったぞ。いや驚いた。とても素敵なんですよ。入り口から地下に続く階段1段1段にコーラムが書かれているじゃないですか。手すりにはお花飾りもかわいく飾られています。タミルニューイヤーだねえ。おめでとうございます。

 

 

真新しいモダンなビルのエントランスに自然や世界とつながる伝統のおまじないの絵が描かれている。これが2026年の東京なのです。まったく素晴らしいよね。これが神田神保町の、

 

「南インド料理 ルシ」

 

のやり方。

さて、コーラムを踏み締め地下のお店へ。レストランの1周年記念でありタミルニューイヤーの時期でもあるからだなあ。華やかでなんとも楽しい気分です。入り口レジ脇にもプージャの祭壇が設けられていました。

11時からオープンということでたどり着いた11時15分。なんとそんな時間に席が8割埋まっているじゃないの。なんということ。ブッフェのことを聞きつけた界隈の人たちでありましょう。1年できちんと地域になくてはならないお店になっているようすが伺えます。

店内、シックでちょっとゴージャスクラシック。インドレストランらしい雰囲気に好感が持てます。山木さん、いた。すでに忙しそうです。こりゃゆっくりおしゃべりってわけにはいかないな。二言三言交わしてブッフェコーナーへ向かいます。

まず驚くのがブッフェであるにもかかわらず、美しいスタイリングがあること。これはすごいなあ。たとえば、もちろんみんながスプーンで突くわけですぐ崩れちゃうのは承知なのに、コバリベルグパチャディなんか見ると、白いヨーグルトをカンバスにして美しくテンパリングスパイスでアーティスティックな意匠を入れてあるんですよ。これだけでこのレストランの目指す「格」のようなものが見えてきます。

そしてさすがの記念ブッフェで料理のラインナップも素晴らしい。特筆はビリヤニとプラオが両方ある贅沢ごはん祭りであること。なんかもう期待が高まるなあ。

まずだいたいいちばん初めにチェックするサラダ。きちんと丁寧で真面目なサラダです。サラダを見るとその店の姿勢と料理の質がわかると思っています。鮮度や管理、盛り付け、どれだけ手を加えているかなどいろいろなことが見えてくるのです。ここは信頼できそうです。

もとより山木さんがいるということはそれなりのクラス、それなり以上の料理がある場所だと承知しているので不安などはじめからないのだけどね。

 

テイファンサンバル

サンバルが旨い。うわーこれうまい。ぴりっと辛くしてあって引き締まった味です。カシミリチリを贅沢に使っていることに驚き。カシミリチリをその風味を生かすのはもちろんのことビジュアルでアクセントに使っているのがニクい。いやあ、これはセンスを感じるなあ。基本から外れていないのに丁寧に細かく作り込んでいくとここまでになるかあ、という味で凄みを感じます。

これはそろそろ西洋料理の豆のポタージュに届く、いや、乗り越えちゃう味かもしれない。料理や酒など、いいもの、極めたものは国境や民族、宗教などを越えて似た味になることを経験で知っているんですよ。シャンパーニュと日本酒とかね。これはそういうものではないかしら。すごいぞ。

 

ハイデラバーディチキンビリヤニ

ビリヤニ、ガリリとホールスパイスが決まり、眠くない、鮮やかな調味があります。言いたくはないけどたまに「ビリヤニ」を名乗るのにエッヂなき眠い味、オーラが感じられないものに当たることがあるんだよ。それはそれで悪くないところもありますがこれはその真逆。華やかさを感じさせる、お祭りの賑わいを感じさせるよいもの。言うことがないですね。

 

ベジジャールフレージ

ジャルフレージだから当たり前、かな。いろいろなスタイルがあるインド料理ですが、これ、きちんと野菜のシャキシャキを残して食感を作ってあるのが好感を覚えます。野菜を切り揃えるサイズなどにも配慮を感じて食べていて楽しいですね。クリーミーだけど重くなく、料理の真面目さを感じます。コックさんの矜持が浮かび上がるな。

 

レモンチキンティッカ

 

ティッカは贅沢クリーミー。ちゃんと炭火の香りを残したこれまた真面目な仕上がり。コッテリ仕上がりだがレモンの爽やかさで重く感じません。脂コッテリではなく調理調味でクリームコッテリにしてあるからというのもあるかな。正しきスタンダードな仕上がり。そうそう、各料理の表記にちゃんとベジ、ノンベジの識別サインがあるの、いいな。きちんとしたレストランだな、とわかります。

 

メドゥワダ

ワダ、これ、インドのミスタードーナツでいいと思う。そういう言い方で説明できちゃう。ふわふわで舌触りよく、えらく旨いです。いやあ、近所のミスドでお食事ミスドとしてこれそのまんま扱うといいと思うぞ、インドドーナツとして。ココナッツチャトニは必ずつけて欲しいな。ワダはけっこう好みも作法もいろいろあって仕上がりも幅広いイメージなんだけどこれは洗練の極み。ワダご遠慮のあたしが言うんですからね。間違いないぞ。

ココナツチャトニ、ちゃんとテンパリングしているところとか、ホールスパイスの香りが強く新鮮であるとか、とにかく土台になる味と香りの基準がきちんとしています。いろいろと料理一つ一つから見えるものがあるねえ。

 

 

コバリベルグパチャディ

きちんと調理と調味のあるヨーグルト。ライタとか、味の調整がないとやっぱりつまらないもの。白いヨーグルトをカンバスにして美しくテンパリングスパイスで飾ってあったりも素晴らしいですねえ。タマネギがパリパリと美味しくて適度な塩味も良い感じ。サンバルに混ぜるのも美味しくてよい組み合わせだねえ。

 

カシミリプラオ

これ今日の中で一番好きです。すごいおいしい。どうもここ数年、ビリヤニもいいけどまぜごはんであるプラオ、特に甘いプラオに目がないのです。にんじんをグラッセ的に甘く煮付けたのを入れるムスリムスタイルのも好きだし、ナッツとレーズンのこういうのもすごい好き。甘さはごはんの味付けにも多少ありますが、ナッツとドライフルーツで決める店が多いんです。ルシはフレッシュの果物も使ってる贅沢なやつ。最高だなあ。舌の刺激ではなく香りでくる強すぎないスパイス使い。ギーの旨みとナッツ、レーズン、フレッシュのリンゴの食感と甘味。いやあいいぞこれ。サンバルプラオメシなんかもやっちゃって旨いったらありません。食べすぎるぞあぶないぞ。

 

ブレッドハルワ

そして最後にやってきちゃったすごいやつ。これ素晴らしい。パンを甘く煮込んでねっとりさせたデザートです。まるで濃いめのカスタードクリーのような仕上がりでさ、そこに甘い香りのスパイス、ちょうどチャーエーに使うあたりの甘い香りのスパイスを放り込んであってこれはクセになっていけない。ものすごいおいしい。

思わずケーララポロッタに挟んでクリームパンを作ってしまったよ。オレンジスライスはビリヤニから頂戴してきました。これ、ヤバし。ふるえるほどおいしい。インドクリームパンとしてリトルマーメイドとかでメドゥワダと以下同文。

チキン類の味と食感の使い分けがあるのも上手いと思わせるし、とにかく全体のボトムラインが高いところから始まってて上は天井知らず、みたいな感じです。

これだけの料理アイテムであるから残念、食べ逃しも多少あったんだけどね、イドゥリとか。いやしかしどの料理も非常に美味しいです。伝統と洗練、両方あるなあ、と感激してます。山木さんに伺うと今日の料理たちは南を中心にインドの東西南北をひろく網羅したラインナップのようで、タミル、アーンドラ、ケーララにカシミール、ベンガルとかね。大変に楽しいものでした。

 

ブッフェ、お祭りという条件が重なってのおじゃまでしたがこの内容と味であるなら日常のランチ、ディナーとも質の高い物が提供されているのは想像に難くないな。間違い無いと思う。

むかしむかしは神田神保町、カレーの街といわれ続けながら事インド料理、インド亜大陸周辺料理に関して選択肢が極端に少なかったのが実際のところでした。そんな時代を懐かしく思いつつ、良い料理を提供してくれるお店がどんどん増えてきて喜ばしいですね。

わたしとしてはエリアを絞れば、そうだなあ。神田神保町界隈、靖国通り沿い周辺と規定してインド亜大陸周辺料理とくればは小川町の「グレビー」、須田町の「アロマズ オブ インディア」、そしてここ「ルシ」が白眉と感じています。他にも新お茶の水の「ゴンド」や神保町「タップロボーン」、「トルカリ」など南アジアの味の選択肢が広がって楽しいばかり。ますます豊かになってるなあ、神田神保町界隈。