
胸が躍るとはこのことか。あの店がまた開くのです。いろいろな理由で飲食店がなくなっていくのは世の常で悲しく思うも致し方なしというところで。自分で意識してそういうものも飲み込んではいるつもりです。悲しいのだけどね。が、しかし。奇跡的に帰ってきてくれるお店も数は少ないが、あるんです。
カレーですよ。
休業の看板が出てから年単位の時間が経ちます。それで、お店はもう開かないだろうと考えていました。その店はカレー専門店。外食店です。同時に「東京スパイシーフーズ(株)」本拠地でもあり、そちらは業務用カレーソースの製造卸の会社でお店が閉まった間も稼働していたようです。

雰囲気のある店で、ねロードサイドの古くて小さな元コンビニエンスストアという風情の建物、いい意味でくたびれた=こなれた雰囲気があって魅力的なのです。老店主が矍鑠とした動きで厨房を回すなどどうにもカッコよい店で好ましく思って通っていました。

東武野田線逆井駅から15分ほど離れたあたり。
「咖喱夢」
のことです。
諦め半分だったんですが、いつぞや諦めきれずに様子を見に行ったことがありました。張り紙はそのままだったけど偶然社長のお姿をお見かけして声をかけました。優しい方で心配して見にきたわたしにレトルトカレーをくださった。うれしかったなあ。ご無理なさらないで、と思いながら「もう十分だな」、とも思ったのですが。


ある日、この近所に畑を持つ「タケイファーム」の武井代表が「朗報です!」という言葉と共に9月に再開の張り紙の写真を送ってくださった。目を疑いました。まだ半信半疑だったし無理はなさらずと思っていたのですが、そのあとに同じく武井さんから「もうすぐです!」と送られてきた写真には大きく9月2日オープンの文字。日にちまで明言しているなあ、でもあわてるな、と思いながら。当日朝はやはり身支度を整えてクルマに乗り込んでしまったよ。

やってる。本当に再開してる。予告があったんだから当たり前とは思うものの、やはりうれしさと驚きとが半々でした。そのままの形で新規蒔き直し、営業が再開されたのです。本当にうれしい。心の中の声なんですが、社長がずいぶん小さくなっちゃった気がします。気のせいかもしれないな。お元気で長く続けてくださると嬉しいけど、無理しないでください。心から。


それで、若い衆がお二人、サポートに入ってるのが心強い。キビキビとした動きで小気味いいんです。新しい風が吹いているね。社長はいつもと変わらず厨房の真ん中に立ち、淡々とご飯をよそい、フライパンを振って自分の守備範囲を守っています。この安心感たるや絶大なものがあるなあ。店内、レジの前の衝立がたなくなって心なしか外光が入ってレジ前が以前より明るくなった気がします。


さて、注文。やっぱりどうしても頼んでしまう、
「コルマカリー」
ミニサラダをつけてもらいました。


ミニサラダ、立派なんだよ。きちんと量があるし気遣いもある。これが100円ってなんだか申し訳ない気持ちです。価格はそりゃあこの昨今だから値上げもあるよ。しかしその幅は大きいものではなく、いまだお安い感があります。だってカレーが700円からあって他にも3桁のメニューが10近くあるんだよ。特筆です。コルマカリーは1000円。十分に安いよね。


甘くて甘くてほろほろで辛い「咖喱夢」のコルマカリー。タマネギ焙煎が浅めにしてあり甘味が強くフレッシュな味わいがあります。そこがチャームポイントです。フルフルとしたタマネギのつぶつぶがカレーソースの上に見えるのがね、らしさなんだよね。


ちゃんとこのお店の個性というものがあってこれがどうにも好きなのです。肉はチキンが2ピース。大きめで安定の美味しい仕上がり。じゃがいもは入らなかったな。「咖喱夢」ならではの完成度を感じます。


激しくスプーンを動かしてハッと我に帰り、またゆっくり味わって、知らぬ間にまたスプーンのスピードが上がっていて、という繰り返し。それが通い続けている中でのわたしのいつも通り、です。
いつも通りというのは大変に幸せなものなのだね。
