カレーですよ5810(東陽町 富士そば)雨の深夜のカレーかつ丼。

雨がよく降る季節です。季節を越えた感じの降雨量。深夜の雨というのはどうもなんというか、好みなのです。

 

 

カレーですよ。

 

 

部屋にいてそれを感じるのもいいものです。残念なことにわたしの耳は6年前に細かい音を聞き分けたり音階で判断をしたりできなくなってしまい、今に至ります。それでも窓から雨が降る外を眺めるのは気分がいいもの。クルマに乗っている時の雨はとても好き。いつもより少し慎重にクルマを走らせながら、部屋の中よりも大きな音で聞こえる雨音や、フロントガラスに当たる水滴や、それを拭うワイパーの先端から飛ぶ飛沫を眺めるのがとても好き。

そしてそういう夜に深夜営業の飲食店に入るのが好きなのです。腹が減ったというよりも、その場所の深夜の空気を吸うために入るのです。牛丼店は便利に使えるからいいね。以前より代表的な3店はモダンになって綺麗になって、深夜の空気を少し邪魔する感があります。個人的な感覚だけどね。

ファミレスは深夜営業をする店が少なくなりました。それで「まだやってるだろう」と営業時間など何も調べずにスーッと入れる昔のあの感覚がなくなってしまい、足が遠のいたまま。ドーナツショップも昔は深夜営業をしていて、あの空気感は独特で好きだったな。ミスタードーナツの店のボックスシートの座面、尻の下が硬いオレンジ色のプラスチックだったころの話し。

そして蕎麦屋。

 

「富士そば」

 

も新しいお店はずいぶんモダンで洒落た感じになったのですが、蕎麦屋ってのは不思議と「あの空気」が残っています。説明はむずかしいのですが、深夜帯の寂寞とした空気のこと。深夜に蛍光灯が明るすぎて胸が痛くなるあの感覚。

富士そばのカレーはなんということのないカレーだと思います。まったくもって悪いものではないよ。ただ指定してここに食べにくるというものでもない、かな。だからこれは悪口ではないのです。普遍性を内包しているという、そういう意味のことを言っているのです。

そして、ところが。

その「なんということのないカレー」が例のあれになると豹変するんだよな。いったいなんなのだろう。甘く温かいあの汁のせいなのかな。どうにもこう、抵抗できない甘い誘惑のようなものを感じます。まさに甘い誘惑であり、甘く仕上がっているわけです。

 

いったい誰がこんなことを考えたのだろう。玉子でとじたカツとごはんのあいだにカレーを挟んでやるなぞ、恐れを知らぬ行為であると言えましょう。ところがこれが、旨いんだ。

 

「カレーかつ丼」

 

は魔性の食べ物です。最近では店頭の蝋細工、いや、今はプラ素材だから食品サンプルというのが正しいかな。あれにまでなっており定番の座を欲しいままにしています。深夜にやっつけるにはいささか重たい食べ物なんですが、深夜のカウンターによく似合うチョイスでもあると感じます。

 

こういうものは深夜に食らうのがほんとうに一番良いと思っています。サマになるというか、ぴたりと深夜の空気に寄り添ってくる感があるから。

腹が減っているのではないんだよ。その深夜の空気を吸い込みに行くのです。