
金島シェフの料理、カレーに思うところがあるのです。あれは、あのすごいやつは、食べる快楽発生装置なのではないか。そういう言葉が浮かぶのです。毎回かならずそれを思うんです。
カレーですよ。
日本の欧風カレーというジャンルにおいて重要な位置に立つ金島シェフ。現在店舗を持たずに活動してらっしゃいます。お店も持つ予定で動いてらっしゃるとお聞きしています。まだまだ未確定なのですがその日が大変に楽しみです。「銀座スイス」さんが築地の「カフェスイス」の場所を確保して金島シェフを応援してらっしゃるのはいいなあ、と感じます。カレーの業界って何かこう、優しい気がします。誰かが都合をつけてくれる感覚。

それで、金島シェフの料理はひと口ずつ、1回ずつがうれしい。ひと口ずつに楽しさや快楽が潜んでいると感じます。なんと言うことだろう。だから掻き込むことはできないのです、勿体無くてね。ひと口ひと口をじっくりと五感をフルに使って楽しみたくなるんです。それが最後に脳の中でひとつにまとまって、巨大な食体験として記憶に残ります。楽しいったらありゃあしない。これを快楽と言わずして何と言うのさ。

お金を払って食事をして、それが当たり前で日常に消えていくような、毎日の食事。そういうものはとても尊いと思います。日常にあって日常を支えてくれる当たり前の食事。そして、お金を払って食事をして、そこに大きな衝撃を覚えて忘れがたく、お金を払わせて欲しい、だからもう一度あの重たい衝撃を自分の中に投げ入れて欲しい、そんなふうに後から渇きを覚えるような特別の食事。こちらもすごく大事。日常という平らな水面に大きな波紋が起こるような体験、ハレとケ。この両方の振れ幅があって日々が充実するのではないかと思っています。

いろいろ書いているうちに、そう言っているうちに今回のスペシャルメニュー、「金島ラム/ラムと香草の欧風カレー」と「ヴィシソワーズ」のセットが届きました。では、まずはヴィシソワーズから。
金島シェフのスープは如何にもこうにも美味しいんです。必ず頼まねばいられない。前回の虎ノ門ヒルズ・虎ノ門横丁での特別営業、イベント「Toranomon Hills Bar Hopping 〜飲んで食べて美食巡り〜」にてPOP UPで
「Authentic Curry KANESHIMA」
が営業となったのですが、その時に「ヴィシソワーズ」をいただきました。印象的な味だったな。

その前は「ポタージュ・ドゥ・オニオン」。これも実に素晴らしいものでした。西洋料理の王道を行く玉葱ポタージュ、こんなに深く奥行きある味わいだったかと。自分の外食履歴を反省したり考え込んだ理させられます。今回の
「ヴィシソワーズ」
も素晴らしいもの。冷製です。昨今の猛暑を涼やかに払拭してくれるのです。きらりとひと筋、光が入るような感覚の美味しさ。ミルクキャンディを舐めているようなつるりとした食感と冷たさ。口中でかき混ぜてやると軽やかなのに深く奥行き感じさせる味。うむむー。感激とは裏腹、喉がひんやりとさせられて気持ちが落ち着いてきます。

そしてカレーの時間。
「金島ラム/ラムと香草の欧風カレー」
です。
まずはラムであること。想像と違うラムだったのです。食感に元気があると感じました。ほろりと崩れてじわりと味わい深く、というような「静」のおいしさではなく、食感豊かで噛んでいくと反発し、旨みが同時にどんどん溢れる「動」の味わい、かな。そうか、金島シェフのこういう一面、しかと見せてもらいました。こういう振り幅も持ってらっしゃる。なるほど、なるほど。

ラム肉の味の複雑さのトゲトゲを抑えながらも肉の個性と味わいの広がりを強く感じさせる仕上がり。ラムは適度な弾力を残してあって噛んでゆく楽しさをしっかりと感じさせます。よくあるつまらない物言いになってしまうのが悔しいのですが、噛めば噛むほど味わいが深くなって楽しさが大きくなるんです。噛むと味がグラデーションになっていることに気付かされます。噛んでいって初めて真価が理解できるなあこれは。


それで、あぶなかったの。うっかりベーコンに心奪われそうになったの。主役を食いそうな良質で美味しいベーコンが添えられていたの。味も、食感も、色合いも素晴らしいものでした。が、しかし、この皿の上では、ほんのりと控えめになって、主役と言うよりも、場面転換を司る狂言まわしの役のような立場なのではと思い直します。
ジャガイモに施されたほんのりの塩がカレーソースと合体してエッヂを立ててくるのがまた楽しいなあ。カレーソースが少し変化動きを見せてくるのです。うん、楽しい。


一番記憶に残ったのは「春菊はハーブである」ということ。思い知らされました。これはものすごく面白い体験でした。そうか、こういう切り口と使い方があるのか。ああ〜なんというか、うーん、これこそセンスオブワンダー。目から鱗であるよ。鍋につきもののちょっと癖のある葉物野菜。それが春菊のイメージです。しかしここでは違うんですよ。ちょっと西洋野菜のふりをしてするりとカレーソースに馴染んでいます。一体どうなっているんだこれ。開いた口が塞がらないよ。


カレーではなく料理を知るということの大事さを思い知らされました。どういった文脈や経験、センスからこういうものをぶつけてくるのか、舌以上に脳みそがそういうものを欲してしまうんです。「Authentic Curry KANESHIMA」の価値を思い知る瞬間でした。


【次回営業の情報】ゆめゆめお忘れなく。
開催場所:築地 カフェスイス
メニュー:金島ビーフ
開催日時:7月24.25日(金土曜)11:30~21:00(金曜日は15~18時は中休み)
